目次
CTCのパートナーであるASOCS社は、ローカル5GのvRANライセンス(CYRUS)と、5Gポジショニング(Hermes)を軸に、スマートファクトリーやDXの実現に取り組んでいます。
- 5Gポジショニングの概要はこちらをご参照ください。
https://cittec.ctc-g.co.jp/blog/local5g-location-based-services
CTCでも自社のラボ環境において、Hermesの検証を行いました。今回は、その結果をご紹介したいと思います。
5G Positioning「Hermes」 by ASOCS
Hermesは2024年にPoC版がリリースされ、様々な場所でPoCを実施して追加開発を行ってまいりました。そして、2025年にはプロダクト版をリリースいたします。
この製品は一般的な5Gポジショニングで行われる3点測量による位置検知だけでなく、AIによる位置情報の学習機能を搭載しており、定期的に見通しが変わる場所であっても位置検知を継続できることが大きな特長です。この特長を生かし、以下のような場所での活用が期待されています。
- 航空機が頻繁に出入りする格納庫(実利用あり)
- 箱やコンテナの配置量や場所が頻繁に変わる倉庫
- ラインが頻繁に変わる工場
CTCのHermes検証環境
まず、Hermesの構成についてご紹介します。
CU: Centralized Unit
DU: Distributed Unit
RU: Radio Unit
UE: User Equipment
今回の検証では、PoC版のソフトウェアを使用しています。
PoC版では仕様上1つのCell(Lower DU)に位置検知に使用するすべてのRUを収容する必要があり、このように片方のCellにすべてのRUを寄せる構成となっています。
また、HermesはCYRUSと同じサーバに搭載しています。5GC、CU、DU、ポジショニングソフトが全て同じサーバに搭載されているため、機能には制限があり、この構成で位置を追従できるUEの台数は3台までとなっています。
私たちの検証でも、4台目のUEを接続すると動作が不安定になる現象が見られました。
RUは台湾のDelta Technologies社製のO-RAN対応RUを使用しました。本製品は工事設計認証取得済みである為、弊社のラボ環境において無線局免許を取得した上で検証を行いました。
Type |
5G Sub6 Indoor O-RU |
Frequency |
4600-4800MHz(技適は4849.86MHzで取得) |
Bandwidth |
10/20/40/60/80/100MHz(技適は100MHzで取得) |
Max Modulation |
256QAM |
Output Power |
24dBm(250mW)per channel |
MIMO |
4T4R (4 layers) |
Time Sync. |
SyncE, IEEE1588 PTP v2(G8275.1) |
Backhaul |
10GbE Fiber |
Dimension |
22cm x 22cm x 7.6cm |
Power Consumption |
<45W |
続いて、RUの配置とエリアをご紹介いたします。
写真で全容をお見せできないため少々わかりづらいのですが、私たちのラボはこのような構造になっています。水色の線は天井まで空間のあるパーテーションです。紺色の線は天井まで空間のない壁です。ここに、写真のように3台のRUを設置しました。
また、図の真ん中に「Static UE」という記載があります。こちらも写真ではわかりづらいのですが、天井近く、見通しの良い場所にリファレンス用のUEを設置しています。Hermesが位置学習や位置測位を行うにあたり必要となる基準のUEとなるため、全てのRUからの電波が良好な場所に設置しています。
Local5Gを1BOXからはじめよう
1台のサーバと1台のスイッチを基礎としたソリューション
Hermesにエリアを学習させる
Hermesの位置精度を上げるためのコツは、以下2点です。
- 5Gポジショニングを動かすエリアの正確な情報(広さ、構造物)
- 実際の電波伝搬状況の把握
まず1つめですが、エリアの情報として縦、横の寸法はもちろんのこと、廊下の幅、部屋の配置、さらには壁の材質など、細かい情報が必要となります。ただしこれは、Hermesに限ったことではありません。位置測位を行う場合、ほぼ全てのソリューションで必要な情報となります。
続いて2つめの電波伝搬状況です。こちらが、Hermesの肝となります。HermesはAIで見通しがない場所の位置も推測して測定するため、構築直後、しばらく時間を置いた後の2回に分けて、エリア内でどのように電波が飛んでいるかを学習する必要があります(場合によっては回数が増えるケースもあります)。
そのため、エリア内に複数の測定ポイントを設定し、この測定ポイントで複数回にわたり学習データを取得します。ポイント数が多いほど精度は上がるのですが、その分測定に手間と時間がかかります。私たちはおよそ60ポイントの位置をプロットし、データの取得を行いました。
廊下に点々と貼られた測定ポイントのマーキング
取得したデータをASOCSにて解析しHermesの学習が完了したら、いよいよ利用開始です!
Hermesの動作を見る!
では、実際に画面上でどのように情報が見えるのか確認してみましょう。
まずはViewer画面です。
画面左側にUEの位置情報が表示されます。各UEの電波強度と位置(X,Y座標)を見ることが出来ます。
また、画面右側はポジショニングが動作している場所の図面です。準備段階で提供した図面がASOCSによってアプリケーションに取り込まれます。
なお、こちらの画面はあくまでPoC版のViewerなので、プロダクト版での表示は大幅に変わる予定です。
続いて、動くUEがどのように見えるのかを動画でご紹介いたします。
現状のHermes PoCの誤差は1~2mです。誤差はRUとUEの位置関係、壁などの材質による電波伝搬の変化、壁とUEの距離など、様々な環境要因によって発生します。この誤差もHermesに限らず、他の電波を使う全ての方式で同じように発生するため、完全にゼロにすることはできません。
私たちのラボは30m四方程度でかなり小さな環境の為、相対的に誤差が大きく見えますが、実際のフィールドを想定すると誤差はこれほど気にならないと思われます。
またUEの位置を示すX,Yの数字は常に変わっており、常時位置が計測されていることがわかると思います。
ASOCSのラボ
私たちのラボは小規模なので、これだけでは具体的な利用イメージがつきづらいかもしれません。
そのため、今回はASOCS社のラボ環境も動画でご紹介いたします。
このデモでは、ドローン、車に乗った人、ロボット、ボディカメラを取り付けた人、計4台のUEの位置を追いかけています。情報量が多いですが、ぜひ途中で止めながら、各UEの実際の動きとそれを検知するHermesの動きを比較してみてください。
まとめ
今回は、5Gポジショニング「Hermes」のご紹介を行いました。
なお、文中にも記載の通り今回検証に使用したソフトウェアはPoC版の為、今後リリースされるプロダクト版は仕様が異なります。機能面においてもPoC版から改善が見込まれますので、さらに活用できる領域が広がることが期待されます。プロダクト版の仕様は以下の通りです(開発中の為、変更となる可能性がございます)。
Hermes PoC |
Hermes for small project |
Hermes for enterprise |
|
RU |
3台 |
最小3台、拡張可能 |
最小3台、拡張可能 |
Cell数(*1) |
1セルのみ |
制限なし |
制限なし |
UE数(*2) |
4UEまで |
20UEまで |
数百UEまで対応 |
Hermes専用サーバ |
不要 |
要 |
要 |
LMF |
不要 |
要 |
要 |
GPUプロセッサ |
不要 |
不要 |
要 |
カバレッジ(*3) |
50m x 50m |
制限なし |
制限なし |
(*1) 1セルにつきRU 3台を収容し、位置検知を行います。
(*2) リファレンスUE(固定常設)が1台必要となるため、移動検知するUEは記載の数字-1となります。
(*3) カバレッジはセル/RU数に依存します。
2025年に入り、5Gポジショニングにご興味を持たれるお客様が増えています。実際に使えるか不安というご意見もあるかと思いますが、少しでもご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。
今回の検証環境構築にあたっては、デルタ電子株式会社、ASOCS社に多大なるご協力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
■デルタ電子株式会社について
https://www.delta-japan.jp/ja-JP/about/Delta-Profile
- デルタ電子株式会社 本件に関するお問合せ先
https://www.delta-japan.jp/ja-JP/customerService
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■ASOCS Hermesご紹介
https://asocscloud.com/ja/hermes/
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