ローカル5Gを用いた位置情報活用方法

2023.10.12

中島 暁子 中島 暁子

目次

→資料ダウンロード:Local5Gを1BOXからはじめよう

 

以前のブログにて、ASOCS社のポジショニングサービス「Hermes」をご紹介しました。

本商材のご紹介には多くの方にご興味を持っていただいております。一方で、位置情報を取得できることに興味があっても、具体的にその情報をどう活用するか、についてはお悩みの方もいらっしゃるかと思います。

今回は位置情報の活用方法と、ローカル5Gで位置情報を取得するメリットについてお話しいたします。

端末の位置情報の活用

端末の位置情報はローカル5G以外にも様々な手法を用いて取得することが出来ます。

最もイメージしやすいのは屋外で使われているGNSS(GPS)情報でしょうか。皆さんも日常的に地図アプリでの現在地情報の取得やナビゲーションへの活用を行っていると思います。

屋内ではどうでしょうか。最近ではショッピング施設や空港でも、マップによるナビゲーションは広く使われるようになってきました。これらは主に、各施設に設置されているフリーWi-Fiのアクセスポイントなどで位置情報を取得し、活用している事例です。

上記はコンシューマー向けのサービスですが、エンタープライズの領域でも位置情報の活用は期待されています。例えば以下のような活用方法です。

活用例

目的

効果

適用業種

物のトラッキング

機器がいつ、どこにあるかを把握する

物を探しに行く時間の短縮、業務の効率化

・製造業、倉庫、物流(台車、大型工具など)
・病院(点滴、計測器具)
・大型工場や大規模大学キャンパス(敷地内移動用自転車や車)

移動体のトラッキング

移動体の居場所を把握する

業務効率化、事故予防

・製造業、倉庫、物流、港湾(AGVAMR、フォークリフト、カーゴなど)

従業員の位置管理

安全管理

危険地帯への立入抑止
体調不良の早期発見

・製造業、倉庫、物流
・港湾、掘削、工事現場など

業務効率化

人員配置や導線の最適化

・製造業、倉庫、物流
・港湾、掘削、工事現場など

位置情報の活用方法(例)


やはりトラッキングする対象は基本的に「人」と「物」です。従業員がどこにいるか、物がどこにあるか、といった位置情報を取得します。

興味深いと感じたのは、主な目的が「従業員が安心安全で働きやすい環境を作ること」ということです。例えば人の位置情報を取得する場合、単に誰がどこにいるかの確認ではなく動線まで含めた情報を取得し、この動線情報を元に在庫の置き場所を変更したり、人が多すぎて滞留してしまうレイアウトを変更したり、といった活用方法です。

物の位置を把握する点も、例えば「どこに探しているものがあるかを検知し、探す時間を減らす」といった使い方が一般的かと考えておりましたが、無人搬送車(AGV)がどういったルートを辿っているかを解析し、最短ルートやより効率的なルートに変更する、といった使い方がなされているようです。

位置情報システムが導入され始めた当初は、「監視されている気がする」という一定の批判もありましたが、データ利活用が一般的となった今では、位置情報を取得することもあまり抵抗なく受け入れられているように感じます。

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様々な位置情報の取得方法

前段でも記載した通り、位置情報を取得する手法は複数あります。
ここで改めて、代表的な位置検知システムをご紹介します。

手法

概要

送信機

受信機

適用場所

移動体の追跡

誤差

GPS
(GNSS)

GPSなどの衛星信号を受信して緯度経度を特定

GPS衛星

GPS内蔵端末

屋外

10m~

IMES

屋内用にGPSと互換性のある信号発信機を設置して位置検知を行う

専用

GPS内蔵端末

屋内

5m~10m

Wi-Fi

Wi-Fiの電波を使って位置推定を行う

Wi-Fi AP

Wi-Fi端末

屋外/屋内

低速

m~数十m

BLE
Beacon

ビーコンの電波強度の差を利用して位置推定を行う

Wi-Fi AP

ビーコンスマートフォン

屋外/屋内

低速

1~数m

UWB

UWB向けの周波数、帯域を利用して位置検知を行う

専用

専用

屋外/屋内

数十cm

5G

5Gの基地局の電波を受信して位置検知を行う

5G基地局

5G端末

屋外/屋内

1~2m

代表的な位置検知システム


このように位置検知方法には様々な方法があります。

いずれも得意不得意があり、完璧なシステムは存在しません。その為、以下のような要件を考慮して最適なシステムを選択することが望ましいといえます。

  • 位置精度
  • 位置情報を取得する対象
  • 位置情報を取得するエリアの広さ
  • 送信機や受信機の設置条件
  • 他のITシステム等との組合せ要件
  • 導入に掛かる予算

例えば精度が大変重視される場所であれば、UWBが有効です。UWBはセンチメートル単位で物の位置を検知することが可能です。一方で送信機、受信機共に専用のデバイスとなる為、他のネットワークがWi-Fiなどで整備されている場所でもそれとは別にシステムを作る必要があります。

屋外と屋内でシームレスに位置情報を取得するのに、IMESという方式もあります。こちらは皆さんがお使いのGPS端末を屋内でも利用できる方式ですが、利用にあたってはJAXAへの申請が必要です。

こうした手間をかけずに気軽に位置情報を取得できるのがWi-FiBLE Beaconです。これらは冒頭の事例でも記載しました通り、コンシューマー向けの位置情報サービスで導入されているケースも多くなっています。

ただしBLE Beaconはシステムの仕様から、「アクセスポイントから何m」といった絶対値で距離を測ることはできません。あくまでも「アクセスポイントの近く」「遠く」といった大まかな指標のみでの表示となります。

またWi-Fiでは端末にランダムMACアドレスという機能が搭載されるようになりました。従来ネットワーク機器のMACアドレスは物理的に固有でしたが、セキュリティ強化の為、この値をランダムにする機能です。この機能が有効となっている場合、端末の位置追跡が難しくなります。ランダムMACは無効化も可能ですが、システム内のポリシーにも依存しますので、Wi-Fiで必ず位置情報が取れる環境ではなくなっているのは事実です。

 

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ローカル5Gでの位置情報取得

上記のように様々な手法がある中で、5Gでの位置情報取得で期待されていることを見ていきましょう。

主に以下のような特徴があると考えます。

①他アプリケーションとの組合せ

端末の位置情報取得機能により、どこに何があるか、がある程度わかるようになりますが、無線を使ったシステムである以上、やはり限界があります。5G以外の手法で位置検知システムを取り入れている場合も、カメラとの組合せで補完しているケースが多いようです。

5Gの場合は大容量通信が可能な為、4K映像伝送との組合せが可能です。これまで解像度の低いカメラしか使えなかった場所でも、高画質カメラを導入し、より詳細な現場の状況を把握することが出来ます。

②リアルタイム性の向上

Release16に対応している5G製品であれば、URLLC(超低遅延)機能を有している為、端末のデータを瞬時に基地局側に送ることが出来ます。位置情報についても従来の手法よりリアルタイム性が向上し、「今、どこに何があるか」を正確に把握することが可能です。また移動体通信に強い為、移動している人や物の情報もリアルタイムに得ることが可能となります。

③専用デバイスが不要

5Gで位置検知を行う場合は専用デバイスが必要ありません。例えば従業員が構内連絡用に保有しているスマートフォンを1台持っていれば、そのスマートフォンの位置をそのまま取得します。AGVの位置を5Gで取得している場合、その5Gデバイスの位置を取得します。1つの端末で全て出来れば、現場で働く人たちの負荷を減らすことが可能です。

④位置精度の高さ

上記の表に記載の通り、位置情報はある程度の誤差を含みます。その中で5Gは比較的小さな誤差(見通し環境で1~2m)で位置情報を取得することが可能です。

これはGNSSよりも小さな値です。したがって、ローカル5Gでの位置情報取得は屋内だけでなく屋外であっても精度が求められる場合は有益と考えられます。

 

上記のような5Gでの位置情報取得のメリットを考えると、人がどこにいるか、移動するAGVやフォークリフトがどこにあるか、といった「人や、ある程度のスピードで動くモノ」の情報を取得するには、ローカル5Gが適しているといえます。

また領域としては、比較的広大なエリア、屋外エリアと屋内エリアが共存するエリアで特に強みを発揮すると考えられます。

Ill-8@4x-80

ASOCSのHermes

ASOCSのローカル5Gソリューションは、「CYRUS」がURLLC機能を有しており、ネットワークスライシングで大容量通信と低遅延通信を併用することが可能です。また、位置検知ソリューション「Hermes」を搭載しており、すぐに5Gの特徴を活かした位置情報の取得が可能となります。

ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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中島 暁子 中島 暁子

2002年入社。衛星通信運用業務を経て、2008年より地域WiMAX、Wi-Fiなど無線関連のサービス企画、プリセールス、導入作業に携わる。 現在はCTCグループの5G/ローカル5GにおいてRAN領域全般を担当。