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5Gはどのように活用すべきか?業界別に活用例を解説

作成者: Cittecブログ編集部|2023.03.01
5Gはモバイル通信の向上と共にビジネス分野での活用が見込まれている

5Gとは「第5世代移動通信システム」と呼ばれている、新しい通信規格のことです。4Gの次の世代にあたる5Gには、高速通信や低遅延、多数同時接続といった特徴があり、モバイル端末の利便性を飛躍的に向上させるメリットがあります。日本国内で5Gを利用できるエリアは年々拡大していますが、5Gには多くの活用方法があるため、どのように活用するべきか迷う方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、5Gの活用例を業界別に詳しく解説します。

5Gとは

はじめに、5Gの概要と、4Gとの違いについて解説していきます。

5Gとは4Gの次の世代にあたる新しい通信規格のこと

5Gとは「5th Generation(第5世代移動通信システム)」の略であり、4Gの次の世代にあたる新しい通信規格です。現在、日本国内で使われている通信規格は4Gが主流ですが、5Gの実用化・さらなる普及を目指し、総務省が中心となって5Gエリアの拡大・整備を進めています。

4Gと何が変わったのか?

5Gと4Gの大きな違いは「通信技術」です。5Gは、4Gよりも通信速度や遅延などの性能が大きく向上しました。たとえば、4Gの通信速度は最大1Gbps程度ですが、5Gでは最大20Gbpsとなっています。また、4Gよりも多くのデバイスを同時に接続できるようになったことも特徴です。4Gでは、同時接続数が1平方kmあたり10万台であったのに対し、5Gは1平方kmあたり100万台と、4Gの約10倍です。様々な機器と5Gを接続することで、ビジネスや生活がより便利になると期待されています。5Gの実用化が進めば、近年需要が高まっているストリーミングやビデオ会議、VR(Virtual Reality=仮想現実)など、大容量のデータ通信が発生するサービスもより快適に利用できるでしょう。

5Gエリアは今後さらに拡大する

5Gエリアは、今後日本全体に拡大する見込みです。令和3年12月28日には、総務省から大手通信会社4社に、5G基地局整備の加速化に関する要請がありました。現在、全国各地で基地局の設置が進んでおり、身近な場所で5Gを自由に使える時代はそう遠くはないでしょう。

参考:総務省「5G基地局整備の加速化に関する要請について(要請)

5Gの3つの特徴

この章では、5Gの特徴である「超高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」の3つの特徴について詳しく解説します。また、各特徴を活かしたユースケースも紹介していきます。

超高速・大容量

1つ目の特徴は「超高速・大容量」です。5Gでは、4Gの100倍となる毎秒10Gbps以上の通信速度を実現しています。高速かつ大容量の通信が可能になれば、データのダウンロード速度が上がり、容量が大きい動画でもスムーズに視聴できるようになるでしょう。たとえば、2時間の映画をパソコンやスマートフォンなどにダウンロードする場合、4Gでは数分かかりますが、5Gであれば数秒で完了するといわれています。また、1つの5G基地局でカバーできるエリアやデバイス数も大幅に向上するため、電波を中継する機器の導入費用や設置に掛かるコストなどもまとめて省けるメリットがあります。これらの通信環境を維持するコストを削減できれば、5Gに対応しているエリアの拡大などにも利用できるでしょう。
5Gによって通信速度が格段に上がることで、高精細な4Kや8Kサイズの映像の送信、リアルなAR(拡張現実)やVR(仮想現実)などのユースケースへの活用も期待されています。従来の4Gでは容量が大きい動画を視聴するときは通信が途切れる時間帯が発生するなど不便に感じるケースもありましたが、5Gでは動画やゲームなどを行う際でも快適に利用できるようになります。
また、大容量の通信が必要なVR・ARサービスや4K・8Kなどの高精細な動画も視聴できるようになります。その結果、自宅でもVRによって臨場感ある映像を楽しめるようになるなど、プライベートの時間をより有意義に過ごせるでしょう。

低遅延

2つ目の特徴は「低遅延」です。遅延とは、いわゆる「タイムラグ」であり、低遅延=「タイムラグをほとんど感じさせない」とイメージするとわかりやすいでしょう。5Gでは、基地局と端末の間でデータを送受信する際の遅延時間が大幅に減りました。4Gの伝達遅延が0.01秒だったのに対し、5Gでは0.001秒と1000分の1秒まで短縮されています。従来の4Gでは、データの遅延時間はやむを得ないものとして許容されてきましたが、5Gでは離れた場所にいてもリアルタイムに近い感覚で対話できるようになります。

5Gでは、音や画像のズレが少なくなる分、映像やデータの送受信に高精細が求められる遠隔医療や遠隔での自動車操縦などの分野では特に大きなメリットを享受できるでしょう。例えば、タイムラグがない状態での操作が可能になれば、命が掛かった緊急のオペを急遽行う際にも、迅速な対応が可能になります。

他にも、Web会議やプレゼンなどのシーンでも遅延が少ないことで円滑な対話が可能になり、直接対話しているような感覚で仕事を進められるでしょう。テレワーク時の生産性向上につながり、さらに移動に掛かる費用・時間なども削減できるメリットがあります。

リアルタイムに近い状態での対話・映像共有を実現できれば、自動運転や遠隔治療など、低遅延や高信頼が求められる業務に対応できるようになるでしょう。他にも、学習指導や工場・農業での業務指導、オンライン会議など、様々な業務への有効活用が期待できます。

多数同時接続

3つ目の特徴は「多数同時接続」です。5Gでは、4Gに比べて同時接続できるデバイス数が約10倍も増えました。これにより、loTの活用の幅も大きく広がっています。

たとえば、家の中にあるエアコンや照明、鍵、洗濯機など様々な家電設備を、スマートフォン一つで簡単に操作できるようになります。業務においては、ダムの水量や水温、冷凍庫の温度など常に監視しなくてはいけないものを、パソコンやスマートフォンでモニタリングするといった活用方法があります。また、インターネットとIoTデバイスをつなげて、リモートで操作を行い制御することも可能です。

loTが普及すれば、同時接続できる端末数が大幅に増加するため、IoTの活用の幅が広がるでしょう。例えば、冷蔵庫や照明器具、玄関の鍵などをインターネットに接続し、これらの機器をスマートフォンから一元管理できれば、より便利な日常生活を実現できます。

ビジネス面では、企業内にあるパソコンや機械と連携させることにより、管理作業の効率化や人件費の削減などにもつなげられるでしょう。また、遠方にいる状態であっても、現場でのリアルタイムな映像を送受信することにより、迅速な指示や対応が可能となります。
このようなIoTの技術は農業や製造業、建設業など様々な業種で活用されています。IoTの活用方法は業種によって様々ですが、高い技術を持った熟練者の減少や労働者の高齢化など、業種特有の課題解決の手段の一つとして、IoTの利活用が求められています。

参考:総務省「5G未来ビジネスガイドブック

このように、5Gの「超高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」という3つの特徴を最大限に活かせれば、私たちの生活はより便利なものになり、ビジネス面でも多くのメリットを享受できるでしょう。また、業界特有の課題解決の手段としても5Gの技術は活用できます。

現状、5Gを利用するためには5Gに対応している通信機器の購入から始める必要があります。また、5Gが利用できる状態になった時に「どのような方法で5Gを活用するのか」「従来の仕事にどのように応用できるのか」を創造できる人材が求められています。
5Gの有効な活用方法・アイデアを考えるためには、実際に業界ごとにどのような方法で活用されているかを知っておくことが大切です。

5Gの活用例を業界別に解説

建設業

建設業では、現場の建設機械と操作室を5Gのネットワークでつなぐことで、高精細な映像で現場の様子を確認しながら作業できるようになります。建設機械は細かい操作が求められるため、遠隔操作をスムーズに行うためには、機械操作と現場の映像をできる限り遅延なく伝達させなければなりません。4Gの通信技術では限界がありましたが、5Gでは大容量のデータでも遅延なく伝達できるため、直接現場に向かわずとも安全かつスムーズな遠隔作業が可能です。

また、建設現場におけるドローンの活用の幅も広くなります。たとえば、ドローンで計測した3次元データを活用して、リアルタイムで設計図を作成したり、3D図面の作成をしたりすることができるでしょう。これまで、ドローンを活用したデータの解析などは、ドローンを回収してから行う必要がありましたが、5Gではリアルタイムでのデータの送受信や解析が可能です。5Gを有効に活用すれば、建設業務の効率化や現場での安全性向上につながります。

他にも、BIM(Building Information Modeling=ビルディングインフォメーションモデリング)の促進につながる点も5Gの大きなメリットです。
BIMとは、企画や設計、施工、保守・管理などすべての工程の情報を3次元モデルとして集約し、情報活用を円滑に進めることを目的としたソリューションです。3次元モデルは大容量のデータとなるため、これまでは現場でタブレット端末を用いて確認する作業は困難でした。5Gであれば、どの場所にいても3次元モデルに集約しているデータをチェックできるようになります。また、現場に居ながらも責任者の意見を反映したり、施主の提案を各現場の業者に伝達したりと、幅広いシーンで活用できるでしょう。

製造業

製造業の分野でも、5Gの技術は様々な用途で活用できます。製造業や建設業においては、熟練した技術を持っている人材の不足や、危険を伴う作業が発生することが課題です。これまで人の手で行っていた作業を、機械が自動で行えるようになれば、工場全体の生産性向上につながるでしょう。具体的には、ロボットを導入して遠隔操作や自動制御を行ったり、設備機器のメンテナンス作業を遠隔で一括して行ったりするなど、直接現場に出向かなくても作業を行えるようになります。また、これまで人が行っていた危険な作業を機械に置き換えることで、安全性の向上も期待できるでしょう。

その他、データ分析によるオペレーションの最適化や、製品の仕分けや検品などの自動化も可能です。労働環境の改善や人材不足解消などの効果も見込めます。

農業

農業では、農業従事者の減少・高齢化が大きな課題です。また、人手が必要な作業や、危険を伴う作業が多い点も問題視されており、近年5Gやローカル5Gなどを駆使して、これらの課題を解決しようとする動きが多く見られます。特に、2019年に農林水産省が開始した「スマート農業実証プロジェクト」の影響により、5Gやローカル5Gを活用したスマート農業が日本各地で拡大しています。

たとえば、スマートグラスを活用して、農作物の画像を送って遠隔から農作物がどのような状態なのか、どのように対応するべきかなどを遠隔から指導・支援してもらう取り組みが挙げられます。スマートグラス以外でも、遠隔操作によるカメラで農作業者の支援を行ったり、収穫タイミングについてのアドバイスを受けたりなど、様々な方法での支援が可能です。4Gでは、送信した画像の質感、色見などの詳細が分かりづらく、やり取りにも遅延が発生するケースが多く見られました。一方5Gでは、高精細な画像で農作物の状態を確認しやすく、遠隔からの指導やアドバイスも遅延なくスムーズに行えるメリットがあります。

遅延が少ないスマートグラス、カメラを活用することで、生産性向上や作業者のスキルアップが期待できるでしょう。他にもIoTでのデータ収集・管理によって、作物や家畜の生育状態や気候、市場状況などをスピーディーに把握できるようになります。さらにrドローンや無人農機をネットワークにつないで稼働すれば、限られた労働力でも作業を円滑に進められるでしょう。

医療

医療現場でも5Gの活用が進んでいます。病院へ行かずとも、遠隔から専門医による診断を受けられるようになる日も近いでしょう。患者とのヒアリングや鮮明な画像・動画での診察、リアルタイムで聴診音を聞くといった技術の開発が進められています。遠方や交通手段が少ない地域に住んでいる場合、病院まで足を運ぶのは労力がかかります。遠隔診断では、移動の労力や身体への負担を心配することなく、治療を進めていけるでしょう。5Gは、医師・患者の負担軽減に役立つ技術として期待されています。

また診察以外でも、手術支援ロボットによる遠隔手術の実証実験なども行われています。高精細映像を用いた遠隔手術が可能になれば、ヘリコプターなどでの患者移送中の緊急手術ができるようになり、救急医療の分野でも活用できるでしょう。

遠隔での診療・手術は、医療格差の緩和や解消にもつながります。設備が充実している医療施設や医師は都市部に集中している傾向があり、地方では十分な医療を提供できる体制・環境は整備されていません。今後、5Gの技術が進歩すれば、地方に住んでいてもレベルの高い医療サービスや手術などを受けられるようになります。

エンターテイメント

5Gの活用は、国内のエンターテインメント業界にも大きな影響を与えます。高速・大容量通信が可能な5Gでは、4K・8Kといった映像のストリーミング配信もスムーズに行えます。また、5Gの高速・大容量通信と低遅延の技術によって、VRやARのクオリティも向上するでしょう。たとえば、ヘッドセットを装着して現場にいるような感覚で音楽ライブを楽しめたり、様々なアングルでスポーツ観戦を楽しんだりするなど、これまでにはなかった新しい体験ができるようになります。

近年では、スポーツ観戦やライブ中継などを同時に2画面で楽しめるコンテンツが増えていますが、映像の遅延や表示される情報にタイムラグがあることが課題とされてきました。5Gであれば、映像や情報がリアルタイムで表示されるため、様々な情報を得ながらスポーツやライブを同時に見ることができます。また、VRやARなどを活用すれば、直接会場でしか見れない角度からでも、楽しめるようになるでしょう。

スポーツ

5Gはスポーツの世界にも大きな変化をもたらします。特に5Gの大きな恩恵を得られる可能性が高いのは、バスケットボールやバレーボール、フットサル、ハンドボールなどのアリーナスポーツだといわれています。アリーナスポーツの場合、天候などの影響を受けずに試合時間が固定されているケースがほとんどです。また、カメラを設置しやすく、どの角度からでも撮影できるため、魅力的な映像を作りやすいことが大きな理由です。

たとえば、プロのフットサルチームやバスケットボールチームなどでは、試合中の選手の動きやチームのフォーメーションなどをリアルタイムに撮影し、そのデータから選手やチームの分析ができます。ハーフタイムなどに撮影したデータを基に作戦を練り直したり、新しい作戦を指示したりすることが可能です。リプレイ検証などもスピーディーに行えるようになるため、際どい判定に対しての見直し時間の短縮や試合の質向上、観客の満足度アップにもつながるでしょう。

働き方改革の推進にもつながる

5Gは、働き方改革の推進にもつながります。5Gを活用すれば、高速通信によって同じ空間にいるような感覚でビデオ会議を行ったり、大容量のファイルでもスムーズに共有したりできるようになります。わざわざ出社して仕事を進める必要がなくなるため、交通費や移動にかかる時間を削減できるでしょう。5Gでのスピーディーな通信によって、業務効率化や生産性向上などの効果が期待できます。

また、テレワークがよりスムーズに行えるようになれば、子育てや家族の介護などで自宅から離れることができず働けない状況にある人も、仕事に就けるようになります。従業員の状況やライフスタイルに寄り添った働き方を提供することで、満足度が向上し、結果的に企業の利益向上や離職率低下につながるはずです。

まとめ

5Gは「超高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」の3つの特徴があり、様々な業界で活用されています。対応している機器を購入する手間はかかりますが、5Gの導入には多くのメリットがあります。企業・地域特有の課題解決のためにも、5Gを有効に活用していきましょう。