ローカル5Gの使い方を考える

2024.08.16

中島 暁子 中島 暁子

目次

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法制度化された当初からローカル5Gを推進してきた立場として、気になっていることがあります。

実際にネットワークを使うユーザの皆さんには、まだまだローカル5Gをどう活かすか、がイメージ出来ていないのでは、ということです。

今まであらゆる業種のお客様に、ローカル5Gのご紹介をしてきました。しかし、実際に導入に至ったケースは正直なところ、ごく一部です。法制度化されて数年経過した今でも、実業務で活用されている事例は非常に少なく、検証、お試し利用に留まっているお客様も多いのではないでしょうか。

実用化に至らない理由として、今でもよく聞かれるのが「ユースケースがない」という意見です。しかし、ではどういうユースケースがお客様の環境に役立つのか?という疑問をぶつけると、なかなか議論が進みません。今回は、ここをもう少し深堀して、よりこの市場が発展するために私たちSIerが出来ることを考えたいと思います。

ローカル5Gの現実

ローカル5Gは法制度化された当初「超高速」「超低遅延」「多接続」という3つのキーワードで次世代ネットワークとして注目されてきました。しかし実際には2024年現在、世の中にリリースされている多くの機器は3GPP Release15対応の為、3つのキーワードのうち「超高速」しか実現できません。

ではこの「超高速」本当に他を圧倒する速さなのか? というと、答えはNoです。条件によってはWi-Fiの方が高速となるシーンも多く存在します。そのため、特に法制度化初期に導入されたお客様は「思ったほど高速ではない」という印象を持たれていると感じます。

実際のところ、ローカル5Gの強みは、今の日本の制度では「超高速」ではないのです。

規格に従って機能をフルに活かせば超高速通信は可能なのですが、現実に電波は有限な資産の為、周波数や帯域幅といった様々な制約があります。そのため、5G規格が保有する機能をすべて使ったローカル5G通信は実現できていません。

つまり、もともと「超高速」「超低遅延」「多接続」を活かす通信で使いましょう、と宣伝しておきながら、このどれも実現できていない。ユースケースが実現できないのは、当然のことと考えます。

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ローカル5Gの強みを改めて考える

では、ローカル5Gって使い道ないのでは、と思う方もいらっしゃると思いますが、ローカル5Gの強みはこれだけではありません。

こちらも他の媒体でもお伝えした内容ではありますが、ローカル5Gの一番の特徴は「安定した通信」です。

これが、Wi-Fiとの最大の違いです。実際にWi-Fiで業務ネットワークを構築したお客様からも、以下のような声がよく聞かれます。

「最初は安定して使えていたのに、途中から使えなくなった」
「アクセスポイントを追加して一時的に安定したが、しばらくするとまた使えなくなった」
「検証では問題なかったのに、実利用でユーザに開放したら安定しなくなった」

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これらを回避する、改善させる手段として、ローカル5Gは活用できると考えています。その理由を以下に記載いたします。

ローカル5Gの電波は免許制度で保護されている

これはよく言われることなので、ご存じの方も多いと思います。ですが、実際にどのようなイメージなのか、意外と認識されていないケースも多いのではないでしょうか。

ローカル5Gに限らず、どの無線通信方式であっても、電波区間は複数の無線機で共用して使われます。限られた電波の容量を、複数の端末がすべてフル活用するやり方は存在しません(効率的にリソースを使う方式はいくつかあります)。

Wi-Fiの場合は、アクセスポイントが増えても、同じ周波数を使う他の無線機が近くに置かれても、特に管理はされません。自由に置いてよい反面、電波妨害を回避することは難しいです。

ローカル5Gの場合、割り当てられた周波数にはローカル5Gの無線機しか存在しません。そして、ローカル5Gの基地局は厳密に管理されており、(法律を遵守している限り)基地局は総務省の管理の下で追加されます。仮に電波妨害を発生しそうな場所に無線局が追加される場合は、許可が出る前に利用者に通達されます。このため、基本的には通信の安定性は確保されることになります。

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5Gは端末が増えても安定通信が可能

ローカル5Gの場合、無線区間がリソースブロックと呼ばれるブロック単位に細かく区切られています。各端末の通信は状況に応じて最適なリソースブロックが割り当てられます。これらをすべてセンター側の設備で集中的に制御しているため、複数の端末が接続されても通信がぶつかることが少なくなります。
※ローカル5Gではなく、モバイル通信の仕様です

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Wi-Fiの場合、通信制御は行われていません。各無線機は、周りの状況を見て誰も通信していないタイミングで通信を始めます。その為、周りので他の端末が通信している場合は「待ち」が発生します。さらに、自分が通信を始めたタイミングで他の端末も通信していた場合、もう一度送信し直すこともあります。この為、ある環境で端末の台数が増えると、待ち時間、送信やり直しの時間がどんどん増えていきます。そのため、端末が増えると通信品質が劣化してしまいます。

このため、端末1台でWi-Fiとローカル5Gを比較しても差はほとんど出ませんが、複数(十~数十台)の端末を同時に接続させると、Wi-Fiの方が先に通信が劣化する「はず」です。なぜ「はず」かというと、なかなか現実に端末を数十台並べて試験することが実現できないからです。

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強みを活かした使い方

ローカル5Gを「途切れない通信」に使うことを考えてみましょう。例えば、以下のような環境で使うとします。

  • 高速でなくてもいいので、確実に通信を継続したい
  • たくさんの端末が繋がっても品質が変わらない通信環境を使いたい

データ量は多くなくても、継続して機械のステータスをセンター側に届けたい。届けられる情報量は小さいけれど、常時ステータスをアップデートしたい。ステータス情報を知りたい機器が一つではなく数十個にわたる、など、いろいろな用途があるような気がしますね。一つ一つは「ローカル5Gが必要なのか?」と思われる程度の通信かもしれませんが、これらが複数、大量になっていくにつれ、ローカル5Gの必要性が見えてくると思われます。

2025年には、たくさんの端末を繋げるための「5G RedCap」という規格を使った通信も実現可能になる見込みです。(5G RedCapについてはまた別の機会でご紹介したいと思います)

要望はありそうだけど、まだどう実現したらよいかわからない、という方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。私たちも一緒に解決策を考えさせていただきたいと思います。

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中島 暁子 中島 暁子

2002年入社。衛星通信運用業務を経て、2008年より地域WiMAX、Wi-Fiなど無線関連のサービス企画、プリセールス、導入作業に携わる。 現在はCTCグループの5G/ローカル5GにおいてRAN領域全般を担当。