デジタル環境構築サービス/Omniverse™|NVIDIA Omniverseを活用し、お客様のイノベーションを支援

2024.05.07

Cittecブログ編集部 Cittecブログ編集部

 

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)は、米NVIDIA Corporation(以下、NVIDIA)のエリートパートナーとして、NVIDIA の製品を日本国内の多業種・多部門へ導入している。本稿では仮想空間を構築するプラットフォーム「NVIDIA OmniverseTM(以下、Omniverse)」の概要と、デジタルツイン環境構築を検討するお客様に向けたサービスを紹介する。
(株式会社ビジコミ発行 ビジネスコミュニケーション2024年4月号掲載記事を一部編集)


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エンタープライズビジネス企画本部 デジタルビジネス推進第1部
(左)シニアスペシャリスト 比留間 紀夫 
(中)課長 山口 真 
(右)セールス 根岸 秀樹 

“破壊的創造”を実現するOmniverse

Omniverse は、複数の3D データ・アセットを基に仮想空間を構築するプラットフォームであると同時に、構築した仮想空間内でのコラボレーションやシミュレーションをも可能にするクリエイティブツールだ。Omniverse を導入することで、これまでとは全く違うレベルでのイノ
ベーション、すなわち“ 破壊的創造”を実現することができる。とは言っても、クリエイティブワークでは、メンバーそれぞれが異なるアプリケーションを使用してアセットを作成している場合が多い。よって、「まず最初にアセット作成ツールを統一しなければならない」と考える読者は多いだろう。

しかし、Omniverse ならその手間は一切無用。CAD・BIM・CIMなどの3 次元データを扱う各アプリケーションからデータを取り込み、「USD(ユニバーサルシーンディスクリプション)」という機能を介することで、統一フォーマットとして集約し、シミュレーションするこ
とができる。

USD はOmniverse の中核を担う技術だが、元々は米Pixar Animation Studios が開発したさまざまな要素を持つ3D シーンをやり取りするために作られたフレームワークで、その後オープンソース化されApple、Autodesk、Adobe、Siemens などにより拡張が行われている。複数のシステム間で“データ構造を壊さずに”リアルタイムに共有しながら、3D シーンを創り上げることが可能で、大手プロダクションで既に多くの運用実績を誇る。また創られた3D シーンはさまざまなデバイスからのアクセスや対話しながらの編集が可能だ(図1)。

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図1 Omniverse 構成要素

ユースケース:デザイン部門

それでは、Omniverse を活用して具体的にどのようなことができるのか?例えばデザインチームが街路の仮想空間を創る場合。道路・建物1・建物2・電灯・ゴミ箱といったアセットの製作は、デザイナー複数人がそれぞれにサードパーティーツールを使用して行うことが多い。既述のとおり、Omniverse は異なるツールで作られたそれらのアセットを集約し、統合し、コラボレーションレビューに表示する。これにより、アセットを作った複数のデザイナーは、リアルタイムで対話をしながら次々に浮かぶアイデアをスピーディーに反映し、ブラッシュアップすることができる(図2)。

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図2 デザイン部門での活用①

また、色・材質の変更に加えレイトレーシング※ 1 もリアルタイムで行えるため、統合した画像に対し、朝の光の中ではどのようなイメージになるのか? 夕陽の頃は? 夜は?といった光線の変化によるシミュレーションもリアルタイムで物理的に正確に表示される。

さらに、レイトレーシングされたコンテンツは階層毎にコントロールできるため、短時間で反復作業を行い、より多くのデザインを検討することができる(図3)。

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図3 デザイン部門での活用②(出典:NVIDIA)

ユースケース:工場・計画部門

Omniverse は工場プランナー・レイアウトプランナー・メカニカルエンジニア・ロボットエンジニアなどから成る製造業のプランニングチームの連携でも有用だ。

従来、大規模な製造工場で扱う動きのあるデータや複雑な形状データを統合してシミュレーションする環境は存在しなかった。その一因は扱うデータ量の膨大さにある。NVIDIA は本来GPU のメーカーであるため大容量のデータを扱うことを得意とし、大規模な製造業が抱え
る課題に対しても圧倒的な強みを有している。

例えば、建屋の構造・機器の設置レイアウト・工程のメタデータ・ロジティクス・ロボットの動作などあらゆるデータを集約しバーチャル工場1 棟を正確に創り上げることができる。現存のラインに対し新たに増設するラインが作業員やロボットの導線に干渉しないか、どの程度の
照明が必要になるのか、といった微細な条件に対してもそれぞれのメンバーが異なるツールで作成したアセットを統合したうえで、正確にシミュレーションできる(図4)。

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図4 工場・計画部門での活用

また、製造業の中にはシミュレーションをデジタルツインの実現に活かしたい、と考えるお客様は多い。バーチャル工場内で工程のシミュレーションや、ロボットのトレーニング等を実施したいという意向だ。こうした用途にもデータ量に左右されずにリアルタイムで機能するOmniverse は最適と言える。

一方、昨今急増傾向にある製造業におけるAI 画像認識では①大規模・高多様性・高精度なデータ合成、②現実に近似した環境、③正確で物理法則に従ったデータを活用した学習、といった条件が必要となるが、Omniverse はこれらをクリアし、多大な効果を発揮すると考えられる。

その他、ドイツの鉄道会社では列車の自動運転用のAI 学習や、トンネル内の風の影響を仮想空間上で可視化したり、アメリカの大手小売業では人流をシミュレートし、IoTデータと連携させるといったユースケースがある。

Omniverseデジタルツイン構築サービス

Omniverse は、デザインコラボレーションからデジタルツインまで幅広い分野での活用が期待されるが、効率的に実践するためには必要に応じてAI /シミュレーション技術、XR デバイス、セキュアなクラウド基盤や仮想化を実現するクラウド基盤が必要となる。CTC は多くのパートナー企業との協業により、これらに対するさまざまなソリューションを提供している。

その中でも、2023 年10 月から提供開始した「Omniverse を活用したデジタルツイン環境の早期構築サービス」(以下、本サービス)は多方面から注目を集めている。本サービスは「ワークショップサービス」と「スターターパッケージ」から成り、お客様に寄り添いながら、最適なデジタルツイン構築を支援するものだ。提供価格は500 万円( 税抜)からで、製造業や建設業を中心にサービス展開を図っていく。

「ワークショップサービス」

デジタルツインを自社に取り入れてビジネスを拡大したいとしながらも、何からスタートさせればよいのかを模索しているお客様は少なくない。「ワークショップサービス」はそうしたお客様に向けたデジタルツイン実現のためのファーストステップだ。ワークショップでは、まず、Omniverse の活用事例を紹介し、お客様のイメージづくりを支援する。次に、Omniverse で実現したいことをヒアリングし、導入範囲を明確化する。そして合致するOmniverse 機能を紹介し、PoC の提案を行う(図5)。PoC のメニューは「AI 画像認識用学習データ合成生成サービス」「物理シミュレーション設定サービス」「生産ラインシミュレータ連携サービス」などがあり、いずれもCTC がこれまで培ってきた知見やノウハウを活かした内容だ(図6)。PoC は、お客様ごとにプロジェクトを組成して推進し、CTCの特長とも言える“お客様と同じ視線に立って伴走するスタイル”を踏襲する。

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図5 ワークショップサービス

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図6 PoC 例

尚、既にOmniverse で実現したいことがイメージできているお客様に向けては必要に応じ簡易的なワークショップを行う。

「スターターパッケージ」

「スターターパッケージ」は、Omniverse の導入・構築をご検討されているお客様の入り口となるCTC が独自に提供するサービスパッケージだ(図7)。スムーズな開発、運用を早期に実現できるようOmniverse の有識者がお客様の環境に応じた支援を行う。具体的にはライセンスの取得、インストール、サーバー・ワークステーションまたはクラウドサービスといった必要となるインフラ環境の整備などをお客様とのミーティングを重ねながら要件に合わせた環境用意を実施する。他のソリューションと組み合わせてデジタルツインの環境を構築する場合には、ハードウェアベンダーを始め複数のパートナーとリンクして提供を行う。

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図7 スターターパッケージ

また、お客様がOmniverse で実現したことを基にさらなるビジネス拡大を検討するためのワークショップを開催したり、お客様所有のデータを活用してのデジタルツイン、デザインコラボレーションの実現を支援するといったオプションサービスメニューも用意している。

無限に拡がるOmniverse の価値と可能性

NVIDIA はインタラクティブな高解像度シミュレーションで気候および気象の予測を加速するフルスタックのオープンプラットフォーム「NVIDIA Earth-2」を提供しており※ 2、2027 年までに全地球のデータをもとに“地球まるごと”デジタルツインを創ると表明している。これにより、気象予報の精度は各段に向上するだろう。既に米ロッキード社がカリフォルニアの森林火災のシミュレーションにOmniverse を活用しているが、日本においても企業や自治体から災害時のさまざまなシミュレーションに導入したいとの声が寄せられている。

これまでさまざまなツールで作成・蓄積されてきた既存のデータを“シェアするのではなく、統合する”というコンセプトで開発されたOmniverse だからこそ、その価値と可能性は無限大だ。CTC は今後もNVIDIA のエリートパートナーとして、Omniverse のデジタルツインを活用し、お客様のイノベーションを支援していく。

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※1 光線追跡法。光線などを追跡することによって、ある点において観測される像をシミュレートする手法
※2 https://www.nvidia.com/ja-jp/high-performance-computing/earth-2/

 

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