目次
2023年、CTCではO-RAN対応のローカル5G商材「ASOCS」の取扱いを開始いたしました。
この製品は他のローカル5Gソリューションとは異なる様々な特徴を持っています。今回は、この特徴をご紹介いたします。
ASOCSを取り扱うきっかけ
CTCは2019年からローカル5Gの取り組みを開始しています。
ローカル5Gという単語が世の中で認知され始めた当初、ローカル5Gを構成する機器は全て同じベンダーで揃えるのが一般的でした。
同じベンダーで機器を揃えることは整合性が取れるメリットがある一方、機器の価格が下がりづらい、追加機能の開発がベンダー依存で時間がかかるなどの課題があり、試しに導入することも難しい状況でした。
費用感をお伝えすると多くのお客様から「その価格だと失敗できない、お試しで入れることは出来ないの?」という質問をいただきました。
ごもっとも。
と思いつつ、選択肢をご提示できないもどかしさ。
最小構成でPoCからスタートし、想定通りの使い方が出来そうなら本利用に向けて規模を拡張、自社での利用に合わないとなればそのまま利用終了、そのような使い方が出来る製品が必要と感じました。
そんな時に出会ったのが「ASOCS」です。
Local5Gを1BOXからはじめよう
1台のサーバと1台のスイッチを基礎としたソリューション
ASOCSのコンセプト
ASOCSはO-RAN対応のローカル5G製品です。
メインとなるのはvRAN(DU, CUと言います)ソフトウェアで、サーバに仮想基盤をインストールし、その仮想基盤上に構築します。
RUは自社ラインナップもありますが、別ベンダーの製品を組み合わせることも可能です。5GCは別ベンダーの製品を使います。
ASOCSの主な特徴は以下の通りです(紹介を受けた当時の情報です)。
- 一般的な汎用サーバにインストール可能。FPGA/アクセラレータは不要
- 管理ソフトウェアを標準装備
- 2022年時点でRelease16の一部機能(URLLC/ネットワークスライシング)を搭載
私はプリセールス担当として様々な場面でこの特徴を紹介してきましたが、「この特徴で何が嬉しいのか?」を正確に説明したことがありませんでした。
このブログを書くきっかけは、この「何が嬉しいのか?」を皆さんにお伝えすることが目的です。
FPGA/アクセラレータ不要、何が嬉しい?
ローカル5Gに限らず、どのベンダーの5G製品でも、動作にあたり高い負荷がかかるのが「DU」です。DUはDistributed Unitの略で、そのまま訳すと「分散ユニット」ですが、主に無線信号の変調/復調、エンコード/デコード、MACレイヤの処理などを担います。この処理の負荷軽減や高速化を目的として使われるのがFPGAやアクセラレータカードです。
この設計は各ベンダーのコンセプトによるもので、どちらが正しいということではありません。ただ、この記事はあくまでもFPGA/アクセラレータを使わない製品の紹介なので、これらを使わないメリットについて触れます。
では、FPGA/アクセラレータを使わないことによるユーザのメリットを考えてみましょう。
ユーザ目線での最大のメリットは「保守パーツが減ること」です。
FPGAやアクセラレータは、サーバに挿入して使いますが、サーバと同じベンダーで揃えるとは限りません。これらのカードを使う5Gベンダーは、FPGAやアクセラレータのメーカだけでなく型番も指定するケースが大半です。するとサーバとは別ベンダーとなるケースも多く、その場合は保守の際もそれぞれとの契約が必要となったり、故障や不具合の際もそれぞれのベンダーとの調整が必要となったり、といったことが起こり得ます。
また、FPGAやアクセラレータは一般的なITシステムにおいては一般的なパーツではありません。その為、納期や保守交換にも時間を要する可能性もあります。
ASOCSの場合は、FPGAやアクセラレータを使わず、CPU、メモリなど汎用パーツを使ったサーバで動作させることが出来る為、保守のハードルが下がります。
ベンダー側も、開発にあたり考慮するのはサーバに使うパーツのみとなり、相互接続性や動作確認を行うポイントを減らせるというメリットがあります。
ソフトウェアで提供されると何が嬉しい?
ASOCSは専用ハードウェアではなく、ソフトウェアで提供されます。
これもユーザ目線では保守観点でメリットが出ます。
現在、ASOCSはDell、HPE、Supermicroのサーバと相互接続性が確認できています。ローカル5Gを使用したい企業様のITシステムに合わせてベンダーを選択することが可能です。
またソフトウェアでの提供となる為、ハードウェアの老朽化によるシステム入れ替えはありません(もちろん搭載しているサーバの老朽化に伴う入れ替えはありますが)。専用ハードウェアの場合、5年で交換を推奨されるケースが多いです。
すると、高価な専門機器を5年で入れ替える必要があり、かかる費用が大きくなってしまいます。ASOCSの場合は汎用サーバの為、例えばローカル5Gを使わなくなったら他の用途でサーバを使用する、といった選択肢も可能です。
またASOCSの場合は使い方に合わせて1つのサーバに全ての機能を搭載したり、機能ごとにサーバを分割したり、といった柔軟な構成を組むことが可能です。
ASOCSのパフォーマンス
ASOCSは2022年の時点で既にURLLC(超低遅延)、ネットワークスライシングといった3GPP Release16の機能を搭載していました。
当時はURLLCを搭載している製品は非常に少なく、またUE(端末)側も対応している製品がほとんどなかったので、機能を搭載していても実利用を作ることが難しい状況でした。
ただ、先行して実装しているので、まだ実装していないベンダーよりは一歩リードです。追加の機能実装についてもスピード感があれば、それは一つの武器になる、と考えました。
百聞は一見に如かず
ここまで見ると、嬉しいことばかりのASOCS。
ですが、本当に動くのか?スペックはよく見えるけど、実際に動かしてみたら問題点だらけなのではないか? エンジニアとしては当然そういった考えも頭をよぎります(実際にそういう製品もありました…)。
であれば、「百聞は一見に如かず」です。実際に動作を見てみよう、ということになりました。
次回はCTCのラボにASOCSを導入し、検証した結果をご紹介します。
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