ふるさと共創イニシアティブ「CLoV」②:デジタル住民カード|地域と来訪者の 交流の契機となる仕組みを構築

2023.10.26

Cittecブログ編集部 Cittecブログ編集部

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)未来技術研究所は、デジタル住民カード※1(スマートフォンWebアプリ)を利用し、二地域居住者をはじめとする那須町に関わる様々な人々が、地域とより深く繋がるための実証実験を実施している。本稿では、その背景と目的等について紹介する。
(株式会社ビジコミ発行 ビジネスコミュニケーション2023年10月号掲載記事を一部編集)


mitsuzukakawaguchi

新事業創出・DX推進グループ
未来技術研究所
スマートタウンチーム
 チーム長 三塚 明(写真左)
 主任 川口 重之(写真右)

交流人口と関係人口をいかに増やすか?

地方創生を実現するにはいろいろな取り組み方があるが、自治体に潤沢な予算があって課題解決を推進できるケースは、ほぼない。資金に限らず人手不足という観点からも、地域外からの支援が必要だ。こうした現状に対し、CTC は地域と来訪者の交流の契機となる仕組みづくりに
取り組んでいる。

本プロジェクト担当の川口は、交流人口→関係人口といった具合にステップを踏んで、定住者の増加につなげることが重要だとしたうえで、次のように話す。

「例えば、地域の魅力を再発見するイベントを通じてその地域のファンになってもらう→活性化のためのアイデアを募集する→地域の魅力を具現化するプロジェクトを創る→魅力的な体験ができる企画を催行するといったサイクルを回すことで地域と関係人口の好循環が生まれるといった構想を描いています。」(図1)。

2-1図1 地域と関係人口の好循環例

二地域居住者のポテンシャルに注目

昨今、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点を持つライフスタイル「二地域居住」が脚光を浴びている。リタイア後に限らず、子育て世代であっても、週末は自然に触れあいながらセカンドハウスで過ごしたいと考える人は以前より多く見受けられる。

アフターコロナにおけるリモートワークの常態化、自然回帰志向の助長もその一因となっているのかもしれない。二地域居住者は、地域にとって新たな担い手確保や消費拡大等につながる。

一方、二地域居住者の視点からは、二地域居住は趣味や交流を通し人生を2倍楽しむ豊かな暮らしの実現とも言える。そして、被災時の待避場所確保として“帰る場所がある”という安心感にもつながる。

「那須町ふるさとアプリ」を活用した実証実験

CTC は那須町と共にデジタル住民カード※1  を利用した「那須町ふるさとアプリ」を使った実証実験を行っている(実験期間:2023 年9月10 日~ 2024 年3 月8 日)。

本実験の目的は、那須町ふるさとアプリを活用し、①来訪者の訪問頻度の増加、②来訪者の滞在期間の増加、③地域産業の担い手不足の解消、④二地域居住者増加を図ることにある。

那須町は日本有数の別荘地として知られ、かねてから二地域居住者数は多いと考えられるが、別荘を所有していても、どのくらいの頻度で那須町を訪れているのか、はたまた全く訪れていないのか、といった実態は把握されていないのが実情だ。

また、雄大な那須連山、歴史ある那須温泉郷など魅力溢れる那須町を二地域居住先として検討をしている人も少なくないだろう。そうした人々に対し具体的にアプローチを起こせていないという課題もある。

本実験では、那須町ふるさとアプリで得たデータから、二地域居住者の訪問頻度を把握したうえで、地域との関係深化の取り組みにつなげていく計画だ。

「ふるさとアプリのデータから、どれだけの人が那須町に興味を持っているのか、具体的にどこの観光名所で写真を撮っているのか、どういうイベントにアクセスが多いのか、アクセスが多い割には来場者が少ないがその原因はどこにあるのか、等のエビデンスを得ることができま
す。得られたデータを分析することで、那須町様と共に、住民サービスの向上や町の活性化につなげていきたいと考えています」(三塚)。

那須町ふるさとアプリでは、ポイント機能や町内イベント・体験情報や地域のお得情報の閲覧・申込、AR きゅーびー※2 との写真撮影(関連記事「ふるさと共創イニシアティブ「CLoV」①」を参照)、那須町へのふるさと納税等が利用できる。

本記事下部のQRコードからアクセスが可能。登録しない場合でも、地域情報閲覧等の一部機能は利用できる。

2-2図2 那須町ふるさとアプリ画面イメージ

地域への愛着を深化させるデジタル住民カード

CTC は、デジタル住民カードを広域で実施することで効果を増大させられると考えている。自治体がそれぞれに独自の施策を実行するのではなく、自治体の枠を超えたプラットフォームによって良いシステムを共有化し、より一層大きな効果を広域で享受するといった世界観だ。

加えて将来への想いを以下のように述べている。「デジタル住民カードを複数の自治体で実施することで、自治体を横断した横串の情報を提供できます。CTC がそのハブの役割を担っていきたいと考えています」(三塚)。「特定の地域に関わりや愛着を持っている来訪者は、その近隣の地域にも活動を広げやすいと考えます。そこで、来訪者に近隣地域の魅力も届け、更に活動を広げてもらうことで、来訪者・地域の双方のメリットを広げていけると考えています。」(川口)。

CTC は、今後も地域と来訪者の交流の契機となる仕組みづくりに貢献していく。


※1:デジタル住民カード:CTCが構想するパブリッククラウドサービスの名称
※2: きゅーびー:絶世の美女に化けて王や帝をだまし悪事をはたらいた九つの尾を持つ九尾狐が、陰陽師に殺生石に変えられたという伝説から生まれた那須町のご当地キャラクター

那須町ふるさとアプリ
https://furusato-fc.jp/nasumachi
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