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AI 基盤冷却設備|データセンタの最適な冷却方式をワンストップで実現するITファシリティサービス

作成者: Cittecブログ編集部|2024.10.08

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)工事監理部は、SIer の工事専門部隊として、IT とファシリティを一体化したサービスを提供している。本稿では、有資格者が多数在籍する同部が推進する水冷式冷却システムとIT ファシリティサービスについて紹介する。
(株式会社ビジコミ発行 ビジネスコミュニケーション2024年10月号掲載記事を一部編集)

情報通信ビジネス企画本部
工事監理部
(左)工事監理第3課 課長 浅井 伸介
(右)工事監理第2課 主任 佐藤 峻佑

データセンタを取り巻く状況と求められる冷却システム

AI基盤の急速な発展に伴い、IT機器の高速演算が求められ、消費電力が増加している。また、生成AIの社会浸透と需要の増加と共に、データセンタ(以下、DC)への高集積機器導入が必要とされている。CTC はこうした状況に対し、自社のビジネスやサステナビリティの観点からだけでなく、SIer としてPUE※ 1 値を向上させる責務があると考えている。

高集積機器導入を成功させるためには、適切な設備を充分に検討し、省電力効果の高い冷却システムを選定することが重要だ。IT 機器の冷却システムには主に次の3つの方式がある。

空冷式

半導体から発生する熱をヒートシンクが放熱し、ファンの回転によって熱を処理する

水冷式

CPU/GPU の半導体から発生する熱をコールドプレートが吸収し、クーラントの循環によって、熱を処理する

液浸式

機器を冷媒(オイル)に浸し、冷却/ 循環させることで熱を処理する

上記にはそれぞれメリット・デメリットがあるが、AI 基盤の発展速度、DC 設備の準備期間、導入コスト等の理由からCTC は水冷式に着目し、取り組みを推進している。

データセンタ構築を阻む検討事項

水冷式は主に冷却設備、CDU※ 2、水冷ラックから構成される。屋外に冷却設備を設置し、DC ルーム内のCDU を経由して冷却水を水冷ラックに引き込むという仕組みだ(図1)。

図1 水冷式冷却システム

前述のようなDC を取り巻く状況から、自社に最適な水冷システムを備えたDC 建設を希望する企業は多い。しかし、実現にあたっては以下を始めとするさまざまな検討事項が発生する。

  • 電力需要に十分な設備の選定
  • 冷却設備の選定
  • 配管スペースの確保
  • 水冷式に対応したラックの準備
  • 水漏れのリスク対応
  • 各設備間の接続性

こうした課題を一気通貫で解決するため、CTC はIT ファシリティサービス(以下、本サービス)を提供している。本サービスは、企画構想・要件策定から設計・施工、運用保守までお客様にワンストップで支援する(図2)。

図2 「IT ファシリティサービス」

「IT +ファシリティ」を強みにサービスを展開

CTC は、特定建設業許可の認可を受けており、工事監理部のほぼ全員が工事に関連する国家資格を所持している(図3)。こうしたIT とファシリティ技術を伴う例は他社に類を見ないといって良いだろう。

図3 CTC 工事監理部

“データセンタは生き物”と言われるように、通信を取り巻く環境の変化に応じてDC の適正な在り方は変化する。いや、変化しなければならない。例えば、かつて主流であった空冷式では不要だったIT 機器向けの配管類が、高集積機器導入のために今後主流となると予想される水冷式では敷設が必要となり、自ずと管工事も必須となる。CTC はこうした変化に対し、IT ファシリティの知識も管工事の知識も併せ持つ人材が迅速に取り組みを推進する。

一般に、IT 機器が正常に稼働するDC を構築する際、初期段階においてIT 機器が求めるシステム要件に加え、それらが導入される施設環境を踏まえた設備要件の策定が必要となるが、本サービスではシステム要件と施設要件を連携/ 調整し、お客様の設備計画書作成を支援する。また、DC 構築後もDCIM※ 3 による機器や設備の情報分析や気流解析を行い、適切な空調設定等をアドバイスすることでエネルギーコストの最適化にも貢献する。(図4)。

図4 気流解析による空調設備の最適化

2023 年、CTC は日本で最大規模を誇る生成AI 基盤の構築を請け負った※ 4。設備導入および構築をスピーディーに進め、スムーズな立ち上げを実現することで、プロジェクトの成功に貢献した。

CTC は「IT +ファシリティ」を強みに、今後もお客様にきめ細やか且つ迅速なサービスを提供していく。

※1 :Power Usage Effectiveness:データセンタの電力使用効率を示す指標。データセンタ全体の消費電力を、サーバーなどのICT機器の消費電力で割った数値。1.0に近いほど効率的とされる。

※2 :Cooling Distribution Unit:結露しない一定の温度でサーバーに送水する装置

※3 :Data Center Infrastructure Management:設備やICT機器を統合的に監視/管理し、設備効率や運用効率を向上させるシステム

※4 :https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2023/20231031_01/