NW 自動化|大規模なネットワーク自動化を成功に導くNW自動化開発チーム

2024.10.08

Cittecブログ編集部 Cittecブログ編集部

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)ネットワークテクノロジー課は、ネットワーク(以下、NW)に付随する自動化関連の開発に取り組んでいる。本稿では、2016 年に発足し、年々サービス領域を拡張し続ける同課が提供するサービス等について紹介する。
(株式会社ビジコミ発行 ビジネスコミュニケーション2024年10月号掲載記事を一部編集)

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情報通信第1本部
プラットフォームテクノロジー第3部
ネットワークテクノロジー課
シニアスペシャリスト 渡部 友也

NW 自動化実現における課題

NW の大規模化・複雑化に伴いNW の運用・管理コストと負担は増加の一途を辿っている。手動による作業は限界を迎え、NW の自動化を検討する企業は多い。しかし、「大規模なNWを自動化したいが、難易度が高い」「プログラミング知識とコンフィグレーションの知識を兼ね備える人材が自社内に不在」といった理由のために頓挫しているケースも多く見受けられる。また、自動化対象のNWには、単一メーカーの製品だけでなく、複数ベンダーの装置が存在するため、特定のベンダーに依存しない開発体制を保持する必要もあり、実現するには様々な課題を解決しなければならない。

CTC NW 自動化開発チーム

上述のような課題に対し、CTCはNW 自動化の専属チームを組成して、課題に関するナレッジ、NW装置に関連する開発技術、通信業界の業務に対する理解、マルチベンダーへの知見、内製化に向けたサポート等を強みに、企業のNW 自動化を支援している。

NW 自動化開発チームの主な業務は2つにまとめられる。1つは「NW工事/ 作業自動化」。もう1つは「NW検証自動化」である。以下にそれぞれの取り組みを紹介する。

NW 工事/ 作業自動化

「NW 工事/ 作業自動化」は、「初期工事」「サービスオーダー」「運用時作業」に区分されることが多い。これらの自動化を実現するためには、自動化ワークフローシステムやオーケストレータと呼ばれるシステムが必要になるが、NW 自動化開発チームはそれらのシステムの開発の
実績を多く有している(図1)。

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図1 NW 工事/ 作業自動化

インベントリ情報システム化

NW 工事/ 作業自動化にあたっては、装置の物理インベントリ情報に分類されるラック情報や物理結線の情報だけでなく、IP やVLAN 等の論理インベントリ情報もシステム化し、データへのアクセスを可能にすることが重要である。一般的な解としてOSS であるNetbox を利用する
ケースと、Django 等のWebFrameworkを利用してスクラッチで開発をするケースが存在する。

Config生成・投入モジュール開発

インベントリ情報がシステム化されると、NW 装置に投入するConfig を自動生成することが可能になる。生成されたConfig はNW装置に投入される必要があり、それらの一連のソフトウェアを開発する必要がある。これらは単一のNW装置の場合や、追加のみのオペレーションに限れば比較的容易に実現が可能だが、現実的には複数のNW装置に渡り装置使用が異なるConfig の生成・投入の制御が必要になることに加え、追加だけでなく変更や削除のオペレーションも必要になるため、難易度が非常に高いコンポーネントとなる。

NW 自動化開発チームでは要件により適切なツールを選定して開発を進めるが、この領域においてはNative Python(Netmiko) やCiscoNSO で開発をすることが多い。その理由としてはNative Python であれば複雑な処理でも実装することで対応可能であるためであり、Cisco NSO はこれらのNW オペレーションに必要な機能をFramework 的に具備しているため、実装のスピードとコストを最小限にできることがあげられる。

NW 検証自動化

「NW 検証自動化」は、NW 装置に対する機能検証を自動で実施するためのツールを開発する(図2)。

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図2 NW 検証自動化

RobotFrameworkを応用した検証自動化

ツールの中軸としてRobotFramework を利用して開発を実施している。Robot ファイルに検証の単票にあたるシナリオの部分を記載し、試験項目の内容を表現する。シナリオにはRobotFramework のAssertionを利用することで、試験の自動実行だけでなく結果の自動判定も実施させることができる。シナリオに記載された内容を実行するためには、Python で実装されたDrive を呼び出すことでコマンドの実行を実現し、設定の変更や状態の取得を行なっている。また、状態の取得の際には非構造データである標準出力のデータをparse することで構造化データとすることで、複雑な出力に対しても正確なAssertion を実施することを可能にしている。

検証完全自動化の取り組み

実際のNWにおいては検証対象の装置が単一メーカーであることは少なく、マルチベンダーでの対応が求められることが多いが、CTC は様々なNW 装置のDriver を開発し、マルチベンダーでの検証自動化を実現している。また、対象の装置への自動化だけでなく、検証における周辺装置の自動化も実現することで、トラフィックを印加する試験の自動化はもちろんのこと、構成変更やケーブル断線試験や電源断試験も自動化することで検証の遠隔での完全自動化を実現している。

社外向け「トレーニングサービス」も展開

NW 自動化開発チームは、自社内で実施している「NW 自動化に特化したSE 育成プログラム」を通して蓄積した知見をもとに、社外に向けて実践型の「トレーニングサービス」も展開している。本サービスは豊富な実務経験を有するメンバーがNW自動化に必要な知識や技術・ノウハウをトレーニング形式で提供する。トレーニング内容はカスタマイズ可能で、個々に環境を用意し実践的なハンズオントレーニングを実施する。一般的なトレーニングと異なり、実際の開発者がトレーニングを実施するため、実際に経験した開発時の悩みや解決法を学べ、トレーニング終了後もシームレスに内製化の支援を受けられることから好評を得ている。

NW 自動化の技術は日々進歩し、需要も高まり続けている。NW 自動化開発チームは、最新の技術をキャッチアップし、お客様のNW自動化を成功に導く支援を続けていく。

 

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