伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)情報通信事業グループは、主に通信キャリアのお客様に向けてインフラ構築を推進している。その中にあって通信キャリアビジネス企画チームは、「行政や地域と共に、社会の持続的な成長へ寄与する中長期的な新しい価値の創出」をミッションとしている。本稿では、同チームの取り組みについて紹介する。
(株式会社ビジコミ発行 ビジネスコミュニケーション2023年10月号掲載記事を一部編集)
(左から)
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
通信キャリアビジネス営業企画チーム
ロペズ 竜馬クラウディオ
粟島浦村役場
総務課 課長 石塚 和徳氏
総務課 戸田 祥永氏
CTC ファーストコンタクト株式会社
六角 康太氏
「企業版ふるさと納税制度」「地域活性化起業人制度」を通じ新潟県と交流
CTC は、2021 年6 月から人材派遣型の「企業版ふるさと納税制度」を活用し、新潟県への人材派遣を含む寄附を実施している。CTC のエンジニアが、新潟県庁の参与(特別職非常勤職員)として勤務し、地域DX やデジタル改革およびスマートシティの推進に取り組んでいて、本取り組みは、紺綬褒章を受章した。
また、2022 年からは新潟県粟島浦村の地域活性化に向け、「地域活性化起業人制度による派遣に関する協定※1」を締結。光回線敷設プロジェクトの推進、DX 化、将来構想の検討支援を実施している。
昨年度の課題と今後の施策
粟島浦村は、多くの地方自治体と同様に、高齢化、人口減少、人手不足という課題を抱いている。それらは、いずれも慢性化していて、村単体で解決を図るのではなく島外からの支援が必須な状況にある。
CTC はこうした課題に対し、村役場と共に年度ごとに目標を立て、検討を進めている(図1)
図1 昨年度の課題と今後の施策図
中長期的な視点で粟島浦村総合計画の策定を支援
短期に単発で実証実験を実施しても根本的な課題解決にはつながらない。10 年、20 年先の中長期的視点に立脚した計画が重要である。CTCはこうした考えの下、村役場の経営計画に参画し、現計画の評価・現状課題の分析・新計画の策定を支援している(図2)。
図2 村役場との協議風景
新潟県庁から村役場に出向している石塚氏は次のように話す。「本来であれば、予め役場職員が村の課題を洗い出した上で、共創体制を取るべきだと認識しているものの、物理的に人員がいない状況です。
そうした中、CTC 様のサポートは非常に有用であると感じています。私たちが“課題であると感じながらも具体的な解決策を打ち出せないこと”について、最先端の技術とアイデアで真摯に向き合っていただいています。」
役場業務の改善に向けた移住を伴う支援
2023 年5 月より地域活性化起業人としてCTC ファーストコンタクト株式会社(以下、CTCFC)から粟島浦村に移住している六角氏は、現在、役場職員の一員となって、内部から業務のDX、BPOを推進している。
人口約350 人の粟島で一般事務職の村職員が定数17 人の半数まで不足するという事態の中、氏は次のように語っている。「日々新しい物事に触れ、新しい経験をし、発見と勉強の連続です。粟島浦村には多くの魅力がある。移住し、島の生活に溶け込んで、初めてわかることも多い。そうした魅力を外に発信する方法を模索することで支援をしていきたいと思います。」
ICT 技術を主産業に活用し島内外に発信
現在、CTC は粟島の主産業である観光業と漁業の振興を支援する2つの実証事業を推進している。
宿泊先のネット予約
従来、粟島村はADSL 回線で本土とつながっていたが、2022 年に光回線を敷設。CTC は光回線敷設プロジェクトの推進を支援し、本土並みの通信環境が実現した。今後、新たな通信環境を活用し、これまで電話予約のみだった宿泊施設の予約を、オンラインでも受けられるようにする。
まずは、村営のキャンプ場からスタートし、観光協会と提携しながら民宿等にも拡大する予定
だ。
鮮魚のオンライン販売
六角氏は、「粟島村に移住して一番驚いたのは美味しいものが多いということです。何もかもが新鮮で、鱈の刺身等今まで口にしたことのないものも味わうことができます。」と笑顔で語る。しかし、実際には市場に出回らない鮮魚も多い。
そこでCTC は、漁業協同組合と提携し、オンラインの鮮魚販売システムを活用した実証事業も開始した(図3)。
図3 鮮魚のオンライン販売
大手フリマサイト「メルカリ」のように、漁師(売り手)が自分の捕獲した魚に値をつけて、小売店や飲食店(買い手)が購入するイメージだ。
その際、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社が出資している株式会社ウーオ※ 2 が運営するシステムを活用する。本施策によって、島内の漁師の収入向上が期待されている。
今後の展開
島内を歩いていると村の人から声をかけられるまでになったというCTC通信キャリアビジネス営業企画チームのロペズは、「本取り組みで得た経験と知見を、ビジネスの枠に留まらせず、何等かの形で新しい価値の創出につなげたい。」と語る。例えば、粟島での実証事例をプラットフォームを通じて全国へ展開する等の構想を描いている。
未だアイデアの段階ではあるが、実際に島の人々の生活に触れ、さまざまなことを体験して
いるCTC グループだからこそ、実現が多いに期待される。
※1:地域活性化起業人制度
3大都市圏にある民間企業が、受け入れ自治体の要望に応じて、社員を一定期間派遣し、自社のノウハウや知見を自治体に提供する総務省の制度だ。本制度は、地方自治体と企業が協力して、地方圏へのひとの流れを創出することを狙いとしている。
※2:株式会社ウーオ https://uuuo.co.jp/